放射能について~杉田記代子(医師・東洋大学)
今回のような地震や津波は、私たちにいろいろな不安をもたらしましたよね。もし、大変なことが起きても周りには助けてくれる人もたくさんいると思います。放射能という言葉もむずかしかったと思います。原発事故の影響については、私たちにどのような影響が出てくるのかがはっきり見えないので不安になるのも当然と思います。
放射能は、放射線を出す能力のことです。そして、放射線とは、物を通り抜けて目には見えずに、人体にも影響がでます。人体への影響は、放射線を浴びてすぐにあらわれるものと、何年かしてからにゆっくりとあらわれるものがあります。今回の原発事故では普通の人々には放射線による、すぐにあらわれる影響はありませんでした。そして、この放射線を出す物質(=放射性物質)は風に乗って、空気中にひろがっていきますし、雨に溶けて降ってきます。そのために、この放射を出す物質が体につかないようにするためにレインコートを着たりマスクをしたりします。しかし、あなたの住んでいるところが、放射線の量が多いところでなければ、段々と予防をしなくても済むようになります。
放射線の人体への影響特に発がんへの影響は人がおよそ100ミリシーベルト(積算;自然界から浴びる放射線を含めてすべての放射線の合計量)の放射線を受けた場合、発がんのリスクが約0.5%(100ミリシーベルト浴びた200人のうち1人の割合)増えるというものです。このリスクは、野菜嫌いの人や受動喫煙の場合とほぼ同レベルと国立がん研究センターが発表しています。そして、今回の福島原発事故発生時から政府は一般の人に対して、健康被害が生じないように、安全が確保されるように避難や食品の出荷規制などの措置が取られています。従って、規制がない地区での生活や、市場に出荷されている食品での生活については安全であると理解していいと思います。もちろん原発事故はあってはならなかったことですが、これを機にあなたや私たちが放射線と人体への影響のことを正しく知り、今後のエネルギーのことを考えることにもなりました。そして、将来日本が放射線による健康被害の心配がない社会になっていくことをもちろん望みます。
アドバイザー 杉田記代子(医師・東洋大学)