国連事務総長特別代表マルタ・サントス・パイスさんからのメッセージ
2012年2月に来日された国連事務総長特別代表マルタ・サントス・パイスさんからメッセージが届きました。
2011年の地震と津波で被災された日本の皆様へのメッセージ
マルタ・サントス・パイス
1万5千人以上の日本人の命を奪い、数え切れないほどの家族を悲嘆にくれさせることとなった2011年3月11日の破壊的な地震・津波・原子力災害を思い起こしつつ、被災地の復興プロセスに関わるすべての方々の断固たる決意、倦むことのない努力、勇敢な活動ぶりに対して、そして特に被災家族の皆さんの不屈の精神、団結力、並はずれた回復力に対して、敬意を表したいと思います。
子どもたちは、この自然災害の過酷さにとりわけ影響を受けました。親を、家族を、友達を失った子どもは少なくありません。家が破壊され、家族の別離を余儀なくされ、子どもたちが食べ物、水、衣料品をはじめとする基礎的必需品もないまま取り残されたケースも多数にのぼります。また、7千以上の学校が損壊し、多くの教師が命を失いました。
今日もなお、多くの子どもたちが仮設住宅に残され、破壊と苦悩に、そして放射能によって引き起こされる可能性がある健康被害の不確実さに、取り巻かれています。新しい場所に避難し、心理社会的悩みから来る課題に耐え忍びながら、多くの場合、たとえ近親者と離れ離れになっても自分の生活を再建しようと試みている子どもたちもいます。
健康と安寧に対するとてつもない脅威、そして抑うつ、不安その他のトラウマ性ストレス障害の症状が生じるリスクにも関わらず、子どもたちは生活のなかでいつもどおりの感覚を生み出す強さを発揮しています。子どもたちは、自分たちにとって安全な環境を再びつくり出し、学校やレクリエーション活動への積極的参加を推進することに関わりながら、学び、遊び、健康的に成長する方法を見つけ出そうとしているのです。
この追悼の時期にあって、子どもたちの勇気と回復力は、子どもたちの家族にとって、そして私たち全員にとって、ひとつのすばらしい模範であり、あらためて励みのもとになってくれています。
それでも、子どもの権利を守ることの緊急性と、子どもたちが癒され、ふたたび社会復帰していく重要なプロセスを支えることの必要性を忘れないようにしましょう。住居の再建を支援することは非常に重要ですが、子どもたちが家族と再統合できるようにすることもそれに劣らず大切です。子どもたちの健康的な成長発達、教育やレクリエーションに対する権利を保障することは欠かせませんが、放射能と汚染のリスクが確実に防止・除去された環境において初めてそれがうまくいくのだということを認識することも大切です。
昨年の壊滅的な自然災害と関連したストレス、トラウマ、恐怖感、情緒的・心理的苦痛を子どもたちが克服できるように援助することは、きわめて重要です。私たちは、人生の立脚点を永遠に揺るがした破壊的な地震を乗り越えられるよう、子どもたちを援助しなくてはなりません。子どもたちの未来を形づくっていくため、コミュニティは、すでに回復プロセス全体を通じてあまりにも明らかにされてきた強さと回復力を、これからも頼みとしていくことでしょう。今後とも、子どもたちの経験と決意から学び、子どもたちとその家族の皆さんが人生の新たな段階へと歩を進めるにあたって手を取り合っていけることを、私も希望しております。