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子どもの暮らし復興に向けてー4年目の活動

2014-05-04

子どもの暮らし復興に向けて-東日本大震災子ども支援ネットワーク4年目の活動-

2014年5月5日 東日本大震災子ども支援ネットワーク

東日本大震災から4年目をむかえ、子どもたちは、立ち止まることが許されない現実の中で、意見を出す機会はほとんど与えられていないにもかかわらず、できあがった未来図や計画に基づくそのまちの担い手として位置づけられ、期待されるという矛盾の下で暮らしています。こうしたなかで、わたしたち東日本大震災子ども支援ネットワークは、批准20周年をむかえた「子ども(児童)の権利条約」の趣旨や理念をふまえ、被災地域の子どもたちや子育て支援にかかわるおとなたちの発言を丁寧に聴き取り、その思いや声を国会/議会・政府/行政・市民社会などにつなぐ取り組みをしてきました。この重要性はいっそう増していると考え、国会内での集い、被災地での意見交換会、被災した子どもたちと市民の意見交換の集いなど、4年目の活動を継続して展開していきます。

1. 子どもたちが直面している困難
3年という月日は、子どもの復興の状況に「支えられ」の違いをもたらしました。家庭、学校や地域は、その子どもによって壊れ方が違い、また支えられ方にも違いが出ています。地域は、家庭などで支えられない子どもを受け止め、支えなければならないのですが、自治体や国は、子どもたちの被災について丁寧な対応ができておらず、家族とともに家庭や地域で教育を受けながらその年齢にあった成長発達をするという最低限の暮らしや学びを支えることすらできていません。

このような子どもたちが直面している4年目の困難は次のように整理できます。

① 震災後がんばってきた疲れ:自然災害であったこと、それを支援しようとして多くのボランティアの人たちと出会ったことから、必死に背伸びをして努力してきた子どもたちには疲れが出始めています。

② 震災を受け止められない子どもたちの苦しみ:震災と復興の体験を年齢にふさわしい体験として整理し、自分の力をつける支援を受けられなかった子どもたちを中心に、被災を自分の置かれている状況と重ねて考える力がついていない子どもたちが出ています。

③ 悲しみや苦しみを表現できなかったつらさの顕在化:震災後3年間適切なケアを受けることができなかった子どもは、自身が体験したことや感じたこと、考えたことを聴いてもらい、一緒に話すことを体験してこなかったために、震災は過去にならず、家族・親族・友人などの喪失がもたらす孤立、転居等による不自由さ、活動空間の喪失などを埋めることができず、むしろつらさが増しています。

④ おとなへの不満の膨張:自分たちの声が十分に聴かれず、また自分たちの発言も届かず実現しないもどかしさを感じています。「復興に貢献したい」「自分たちも一緒に復興を考えたい」という子どもの気持ちを受けとめる人と場があまりにも不足しています。

⑤ 支えられ格差の広がり:子どもたち一人ひとりの被災状況は違います。けれども現在の子どもの暮らしの格差は、被災後の家庭や学校、地域での経済支援や子どもの心のケアについて家庭や地域で支えてくれるおとながいるか、場があるかによって、影響を受けています。生きることの格差が生じているのです。

⑥ 徹底して寄り添う人や場など日常生活支援の不足:一時ほどではないにしても、イベント型支援が多く、子どもたちが安心感を抱き、関係をつくることができる人や場といった環境が未整備です。

⑦ 震災後の年数が経つことによる支援減少・転換の不安:震災から3年を経て、NPO/NGOの被災地での直接支援からの撤退、国の支援も震災の特別支援から全国的に展開される一般的な施策への転換が始まっています。震災から発生した特別な課題に配慮した移行への取り組みが求められています。

2. 4年目の子ども支援活動に求められる視点

(1)「子どもとともに」復興を
この3年間を見ると、大震災からの復旧・復興において「子どもとともに」という視点が弱いといわざるをえません。その年齢にふさわしい判断能力・行動力のある子どもに育てるという視点も弱いです。身近なおとなたちの疲弊した生活を一緒に過ごすなかで、何を言っても聴いてもらえない、受けとめてもらえないもどかしさのなかであきらめていく子どもたちが出ています。一方で、丁寧な支援を受けられていない子どもたちのなかには、支援慣れしてしまい、社会を切り開くのではなく支援を受けることが前提の暮らしになっている状態も生じています。
子どもは支援の対象でもありますが、復興の主体でもあります。子どもを復興のパートナーとして位置づけることが必要です。そのためには、子どもを単なる保護の対象ではなく、権利の主体として捉え、子どもの成長に必要不可欠な権利を保障している子どもの権利条約の趣旨や規定を活かすことが求められています。子どもの権利条約は、子どものいのちを守ることを基本にして、生活、遊び、教育等を総合的に保障する基盤となるものです。

(2)日常的な支援の重要性
悲しみは、けっしてほうっておいて時が解決するものではありません。悲しみは積み重なり、解決できないと、どんどん大きくなっていきます。だからこそ、安心して聴いてもらうことと語れる場をつくることが重要です。聴いてもらう場がつくられると安心して語り、そのことを過去にすることができて、ようやく未来にむけて歩き始められるのです。そうやって子どもたちを見守り、育てていくことで、じつはおとな自身も一緒に回復していきます。

3. 子どもの暮らし復興に向けた10の提案
子どもの暮らしを復興させるためには、以下のことが継続して緊急に求められています。これらのことは子どもの権利条約の被災地における具体化でもありますし、ユニセフのいう「子どもにやさしいまち」づくりに必要なことでもあります。

① じっくり丁寧に子どもと話し、子どもの思いや願いを受けとめよう
安心して聴いてもらうことができる人と出会い、語ることによって、子どもたちは震災による厳しい体験を過去のものとして、未来に向けた歩みを始めます。今こそじっくり子どもたちの話を聴く機会をつくり出し、その思いや願いを受けとめましょう。

② 子どもを復興のパートナーにするための仕組みをつくろう
子どもたちは地域の今と未来の担い手であるがゆえに、その未来図を私たちは子どもたちと一緒に描かねばなりません。そうした位置に子どもたちを置き、復興のパートナーにしていく仕組みをつくり出すことが求められています。

③ 「つなぎ役」を育て、さまざまな場に位置づけよう
家庭、学校、地域、子ども相互、おとなと子ども、専門家と市民など様々なところで話合いが適切になされず、コミュニケーションがとれないことによって、支援が十分に届かない人が増えています。つながりをつくるためには、調整役割を担う人や組織が必要です。

④ 安心できる居場所をつくりだそう
子どもたち一人ひとりが安全に守られ、自分らしさを出すことができる日常的な居場所が、子どもたちを孤立から守り、希望へと歩き出す力や関係を育てます。

⑤ 子どもが1人でも安心して相談でき、効果的に救済される固有の仕組みをつくろう
子どもがつらい、苦しいと感じたときに安心してSOSが出せ、そのことが効果的な救済につながる仕組みをつくる必要があります。この仕組みは社会のセーフティネットとしても求められています。

⑥ 既存の制度と復旧・復興のための制度との調整を図ろう
震災から3年を経て、震災後の復旧、復興という特別な取り組みから既存の制度への移行が進みます。被災地でのおとなたちの暮らしが激変する中での移行には、それを既存制度が受け止めきれる枠組みと内容を持っているかということが問われています。

⑦ 継続的な支援を確立しよう
大震災から3年が経つなかで、大震災のことが徐々に忘れられ、NGO/NPOなどによる支援も打ち切られようとしています。そのような時期だからこそ、子どもの生活、居場所、遊び、教育等、また家庭、学校、地域、NPO等による子どもの支援が必要です。そのことが希望をつなぐことにもつながります。

⑧ 子どもや家族の支援者を支えよう
子どもには「信頼できるおとな」の存在が不可欠です。ところが、保育士、教職員、施設職員をはじめ子どもに関わる支援者自身が被災者であるという事態にもかかわらず、大多数の支援者は充分な休みもとれず(とらず)、子どもの問題に取り組んでいます。支援者には休むこととケアの両方が必要です。休むためにはスタッフの確保等の条件整備が必要ですし、ケアには相談窓口やスーパーヴァイザーの配置などが必要です。

⑨ 子どもと家族を総合的に支える仕組みをつくりだそう
子どもは家族とともに成長発達をしていきます。家族の暮らしの激変が子どもの成長発達の阻害にならないように、慎重に家族と子どもを総合的に見守り支える仕組みをつくりださねばなりません。

⑩ 子ども支援にかかわる情報や経験を共有し、広めよう
被災地での子ども支援にかかわる者たちが得た子どもの情報を共有し、子どもの権利を具体化するために活動することと、その取り組みが子どもの権利の実現にどのようにつながったのかについて広めていくことが求められています。

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