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東日本大震災から7年目の子どもたちの声と震災子ども支援活動への提言

2017-03-11

子どもの暮らし復興に向けて
-東日本大震災から7年目の子どもたちの声と震災子ども支援活動への提言-

2017年3月11日
東日本大震災子ども支援ネットワーク

PDFはこちら→子どもの暮らし復興に向けて

2017年3月11日、東日本大震災から6年が経過し、7年目となります。
昨年4月には、熊本・大分地震が発生し、災害列島日本では、いつどこが次の被災地と
なるかわからないことがあらためて実感されました。熊本・大分地震の復旧・復興支援
活動では、東日本大震災からの経験や教訓も大いに生かされました。昨年8月には、
岩手県沿岸北部に台風が上陸し、東日本大震災の被災地が再び災害の被害を受けまし
た。地域でのレジリエンス(回復力)の強化が重要であることを再認識させられ
ました。

東日本大震災の被災地域の外では、震災のことが語られる機会が減り、震災が「風化」
されていく懸念があります。しかし、現在も東日本大震災による被害は「進行形」
であるといえます。とくに県外避難した福島の子どもたちが避難先で辛い思いをした
り、いじめを受けたり、家族と別れて暮らす寂しさを抱えていたりして、
今も悲しみや困難さから心が癒されていない人々がたくさんいます。
そのようななかで、様々な支援を力にして成長している子ども・若者たちの姿や
活動は私たちに希望と勇気を与えてくれます。

私たち東日本大震災子ども支援ネットワークは、2011年5月の発足以来、国連
「子どもの権利条約」の趣旨や規定をふまえた被災地での子ども支援のあり方を
提起する活動をおこなっています。震災から7年目も、子どもたちや子どもに関わる
おとなたちの発言を丁寧に聴き取り、継続的な対話を続け、子どもの最善の利益の
具体化を実現するための活動を継続していきます。東日本大震災における子ども
支援活動の視点や経験などについて、今後起こりうる災害からの復旧・復興にも
活かしていくことができるように、行政や様々な団体などとのネットワークを
保ちながら、発信と連携を強めていきます。

昨年までに引き続き、子どもたちや震災支援に携わる方々の思いや声を、国会議員
会館内での集い、被災地での意見交換会、子どもたちと市民との意見交換会などの
機会を通じて、国会や各自治体の議会、政府、行政、市民社会などにつなぐ
取り組みも継続していきます。

1. 震災から7年目の子どもたちをめぐる状況-子どもたちの声から
東日本大震災から7年目。この間に、発災時小学1年生だった子どもたちは中学生に、
中学2年生だった子どもたちは、20歳になりました。6年という歳月を経て、
支援を受けた子どもたちが、子どもたちを支援する立場に成長しています。
震災を経験して、おとなになった子どもたちから、次のような声が寄せられて
います。

「当たり前の日常が一瞬にして失われていったあの日あの時の気持ち、そこから
様々な支援を受けて前向きに成長することができていったという経験など、
特に私たちと同じ若い世代に対して共有していきたい」

「現在おこなっている活動(大学生かたりべの活動)が、少しでも町のために
なれば良いなと思いつつ、どうしたら今の自分の立場で町に貢献することが
できるかなど、“一人のおとな”として考えつつ今後活動していきたい」

被災地をはじめ様々な地域で、子どもたちが復興のまちづくりや地域の
取り組みに積極的に携わる機会が醸成されています。日々支えられてきた
若者たちが、自分自身のことから社会とのつながりを意識し、新たな
活動を始め、様々な形で社会に還元したいと考えています。

「自分たちだけでは自らの経験をどう社会に還元すればよいのかわからな
かったが、(発信する場を与えられ)被災体験が決して無駄になっていない
ことを再認識し、自己を肯定する場が与えられた」

「支えられ格差」に加えて、子どもの貧困問題やDV、虐待など、震災前から
地域にあった課題も顕在化してきています。「支え」が届いていない子ども
たちにいかに支援を届けるか、地域の社会資源を有効活用していくことが
求められます。そして、何よりも、ひとりひとりの子どもたちに寄り添い、
継続的な信頼関係を築いていくことの重要性を認識し、子どもたちの声に
耳を傾けることが求められます。

「同じ被災地にいながらも、周りの子たちとの“被災差”を感じ、自ら支援を
断ってしまう子どもたちがいます。(しかし)お金や物を提供する支援で
なくとも、学習支援や、やりたいこと、自分や故郷の将来を考えるような
プログラムはそれぞれの未来を描くことができる子どもたちひとりひとりに
とって、とても重要な機会になると思う」

「まずは子ども達にしっかり、寄り添って話を聞いてあげることが一番大切。
一方的な支援ではなく、子ども達に寄り添い、ニーズに答えていく方が関係性を
築くことができる。子ども支援は継続することに意味があるので、
信頼関係が重要になってくると思う」

「大きな被害を受けてもすぐ立ち直れる子もいれば、小さな被害でも心に
大きな傷を受けた子もいるので、被害の大きさで心に負った傷の程度を決めずに、
柔軟に対応していくことが大切」

東日本大震災からの復興状況や被災した子どもたちの現状などを考え、そして上記の
意見を含め成長した子ども(若者)たちの姿を見ると、子ども・若者の参加の下で
『東日本大震災子ども・若者白書』をつくることが求められています。

2. 災害子ども支援活動に求められる視点

私たちは、2016年のネットワーク発足6年目のメッセージとして、以下の(1) から(5)の
視点を提示しました(子どもの暮らし復興に向けて−東日本大震災子ども支援6年目の
活動の視点
http://shinsai-kodomoshien.net/wp-content/uploads/SHINSAI_kodomo2016051.pdf
を参照してください)。
これらの視点は、東日本大震災における災害子ども支援活動に求められる視点として
提示しましたが、今後起こりうる災害における子ども支援活動にも共通して求められる視点です。

(1) 「子どもとともに」復興を
(2) 子どもたちのレジリエンス(回復力)を生かす
(3) 子どもたちを分断しない、「子どもにやさしいまち」づくりを
(4) 子ども観、子ども支援の捉え直し:一人ひとりの子どもに寄り添った支援
(5) 子ども支援の主流化(子ども支援を後回しにしたり「次いで」にしないために)

3. 「子どもの暮らし」復興に向けた10の提案
本ネットワークでは、「子どもの暮らし」を復興させること、すなわち、すべての
子どもが生来の力を最大限に発揮できる環境を整える「子どもにやさしいまち」を
具体化するために、7年目にあたって、次の10の提案をします。そして、この提案を
実現するために、とりわけ子どもが取り組むことができるように、人材・物品・予算の
確保を含め、国・自治体・市民社会等がそれぞれの役割を果たすとともに連携する
ことが求められています。

今後起こりえる災害において、子ども支援活動をおこなう団体や個人の方々の
活動指針として参考にしていただければと思います。

① 子どもと向き合い、子どもの思いや願いを受けとめる活動を継続しよう
安心して思いや声を聴いてもらうことができる人と出会い、語ることによって、
子どもたちは震災による厳しい体験を過去のものとして、未来に向けた歩みを
始めます。子どもたちの話をじっくり聴く機会をつくり出し、その思いや願いを受け
とめる活動を続けることが大切です。震災から7年目をむかえる今も基本におかれる
べき点です。

② 子どもの自己肯定感と安心感を育てよう
子どもたちの「生きていていいんだ」、「自分のことを考えていいんだ」というような
思いを支える自己肯定感は、子どもたちが今後の自分と社会の関係を考えていくことに
つながっています。そんな子どもたちの思いや願いを受けとめるためにも子どもたちの
日常にきちんと寄り添い、子どもたちが安心して語れる状況を家庭や地域など身近な
場につくり出すことが大切です。

③ 子どもの声を社会化し、子ども・若者参加の下で
『東日本大震災子ども・若者白書』をつくろう
子どもたちは地域やまちの“今”と“未来”の担い手です。まちの未来図は、子どもたちと
一緒に描かねばなりません。子どもにそうした“役割”を与えることや、子どもが地域や
まちの復興に意見を述べる機会をつくることは、子どもたちの心のケアにもつながり
ます。子どもたちがただ語ったり意見を述べたりするだけではなく、個人の震災体験を
社会化していけるような場をつくることも大切です。そして、それらの声がきちんと
政策に反映されるなど、つないでいくことが必要です。そのようななかで、
子ども・若者参加の下で関係者総がかりによる『東日本大震災子ども・若者白書』を
つくっていきましょう。

④ 支援につながっていない子どもに工夫して積極的に働きかけよう
子どもたちの間の「支えられ格差」が拡大しています。まわりに支えてくれる仲間や
おとながおらず、日常に寄り添う形の学習支援や遊び場などの活動につながっていない
子どもたちと支援をつなげる方法を考えていくことが大切です。おとなから子どもへの
一方的な誘いや価値観の押し付け、情報の一方的な伝達だけでなく、子どもたちが
楽しんで参加できるような工夫や子ども同士が誘い合って自主的に参加できるような
仕組みづくりも求められています。

⑤ 多様な出会い、経験と挑戦の機会を提供しよう
被災体験はそれぞれです。他の地域の子どもたちと交流すること、復興の過程で様々な
立場や職業のおとなたちと出会い、支えられることで、子どもたちは、自らの多様な
可能性を発見し将来の姿を描きます。実際に子どもたちは行動し始めています。
それを支援することはおとなの役割です。

⑥ 安心できる「居場所」-とりわけ中高生も集える「居場所」をつくろう
子どもが安心して自分らしさを出すことができる、日常的に使える「居場所」が、
子どもを孤立から守り、前向きに歩き出す力や強い人間関係を育てます。低年齢の
子どもたちだけでなく中高生も、学校以外でも勉強することができたり、
友人や信頼できるおとなとつながれたりできる「居場所」が必要です。

⑦ 子どもが安心して相談でき、効果的に救済される仕組みをつくろう
家族や先生、友人にも悩みを打ち明けたり相談したりできない、またはそうした
機会を持てていない子どもたちがいます。「つらい」、「苦しい」と感じたときに、
子どもが安心してSOSを発信できる環境をつくり、その発信が、効果的な救済に
つながる仕組みをつくる必要があります。学校や施設にある既存の仕組みに
とどまらない、独立した新たな仕組みづくりが求められています。
この仕組みが効果的に機能するためにも、支援者が子どもの気持ちに寄り添い、
市民と行政などが共同して子どもを理解し、支援を進めることが必要です。

⑧ 子どもや家族の支援者を支えよう
子どもを支えるには、日常的に子どもと接する保護者や周囲のおとなも支えることが
必要です。子どもには「信頼できるおとな」の存在が不可欠です。保育士、教職員、
施設職員、学童指導員など子どもに関係する様々な職員や支援者が、適切な勤務条件の
下でそれぞれの仕事ができる環境を整えること、支援知識や技術を向上するための
研修の場などを与えられ、地域の復興を担う存在になれるよう、行政や地域が支援
することが必要です。また、彼らが十分に休息を取れるような機会をつくっていく
ことも重要です。

⑨ 地域の人々と連携し、既存の制度と復興のための制度との調整を図ろう
外から来た団体の支援で始まった活動が、その団体が撤退した後も「仕組み」として
地元に残るよう、被災地に既存の団体の能力の強化や、地域の方々の活動への参加を
積極的に促す取り組みをしていく必要があります。また、震災後の「復旧・復興」
という特別な取り組みから、既存の制度への移行が加速しています。
被災地で進める支援の内容を、既存の制度でも運用可能な形、または運用が容易な
形にしていくことが重要です。

⑩ 情報や経験を、「今後の備え」として共有しよう
支援活動で得た知識や情報、経験は、今後の防災・減災への取り組みに生かせる
重要な資源です。子ども支援に関わる者・団体が実践した支援のあり方を広く共有し、
災害時の子ども支援のツールとして、実際に支援を受けている子どもたちや震災当時
子どもであった世代の意見も聴きながら、今後の備えとして残していくことが
求められます。

【連絡先】
東洋大学社会学部 森田明美研究室
〒112-8606 文京区白山5-28-20 東洋大学白山校舎2号館608号室
TEL・FAX 03-3945-7481
E-mail info☆shinsai-kodomoshien.net (☆を@に変えてください)
※お問い合わせはメールにてお願いします。
ホームページ http://shinsai-kodomoshien.net/

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