東日本大震災から9年目、教訓を次の災害とまちづくりに生かす
東日本大震災から9年目、子どもたちや若者たちに寄り添う支援を
継続しつつ、教訓を次の災害とまちづくりに生かす
2019年3月11日 東日本大震災子ども支援ネットワーク
2019年3月11日、東日本大震災から8年が経過し、9年目に入ります。
わたしたちは、子どもの権利条約・国連採択30年、日本批准25年のメモリアルな年にあたって、これからもこの条約に具体化されている子どもの権利を基盤にいっそう活動しています。
2018年は、日本列島がまたもやいくつもの災害に見舞われた年でした。6月には大阪北部地震、7月には西日本豪雨、9月には北海道胆振東部地震。亡くなったり負傷した子どもたち、親や親戚、友人など身近な人を亡くしたり、悲しみや怖い体験をしたりした子どもたちもたくさんいました。 その一方で、東日本大震災の記憶は風化が進んでいます。
東日本大震災は、子どもたちの生活に大きな影響を与えた未曾有の大災害でした。復興支援も広域にまた長期的に進められています。その復興支援の過程からは、今後起こりうる災害にどのように対応することが子どもたちの最善の利益につながるのか、子どもたちの思いや願いを含め子ども参加のまちづくりの持つ意義やそのすすめ方などについて、教訓をたくさん得ることができます。 これまで、私たちは、行政やNPO/NGOなどの民間団体と連携しながら、
国会議員や県議会議員、関連省庁や各部、市民団体などとの意見交換会を通じた政策提言活動、大学などを会場とした一般の方々向けのシンポジウムの
開催などを行ってきました。また、東日本大震災1年目から毎年、計8回のメッセージを発信してきました(http://shinsai-kodomoshien.net/?cat=53)。
これらのメッセージの中で提起された、災害子ども支援活動に求められる視点や「子どもの暮らし復興」に向けた提案の中には、今も必要とされるものが多くあります。私たちは、昨年のメッセージで、震災後20年間の継続的な支援の必要性を提起していますが、これまでの視点や提案を踏まえつつ、東日本大震災から9年目の今、特に以下の点を強調したいと思います。
1.「東日本大震災子ども・若者白書」の作成東日本大震災の記憶を忘れかけている
時期を迎え、東日本大震災の教訓を生かすための「東日本大震災子ども・若者白書」を作成する必要があります。関連するデータの収集を含め、様々な災害が子どもたちにどのような影響を与えるのか、どのような予防や対応が求められるのかなどについて検証した白書が今こそ求められています。特に、災害後の短期的な影響だけでなく、中長期的に子どもたちがどのような影響を受けてきたのか、どのような災害支援が有益であり、今後も必要とされるのかも含めて調査を行う必要があります。また、実際に大災害を体験した子どもたちの声や体験を生かす、防災や復興のためのマニュアルなどの作成も早急に作成する必要があります。
2.おとなになった子どもたちへの支援-拠点づくりと人材育成の継続東日本大震災の発災当時小学校6年生だった子どもたちが20歳を迎えました。発災時に18歳未満だった子どもたちの多くが、すでにおとなになっています。被災した地域の復興を担う立場になっていたり、自らが子どもを育てる立場になっていたりする若者たちもたくさんいます。震災からの時間の経過とともに、自らの体験を語り始めることができてきた若者たちが、同じ志を持つ仲間たちとのネットワークもつくり始めています。地域のおとなとして活動を始めた若者たちの希望を支え、支援していかなければならない時期になっています。様々な活動を行っている若者たちを支援していく拠点づくりの活動、助成金の確保、専門的な支援活動が求められています。また被災地の子どもたちを支える人材としての若者育成にも力を入れていく必要があります。
3.総合的で長期的な支援と支援者支援の必要性 加えて、支援が必要であるにもかかわらず、専門的な支援につながることができなかった子ども・若者がいます。とりわけ震災発生時に高校生以上だった子どもたちは、国や自治体による学校における心のケアなどの支援をうけることなく大学などを卒業し、就職や出産・子育てなど新しい人生の岐路にたちはじめています。支援の対象になってこなかった若者世代が子育てに困難を抱え、被災地の保育所などでは子どもへの影響が表出しています。このような状況に対して、個々の成長や発達の課題に応じ、医療・心理・福祉・教育などの総合的かつ長期的に支援することが求められています。また、大震災の二次的・三次的影響としての家族が持つ機能の低下と、それに起因する子どもの多様な課題の発生に対して、それらに対処しようとしながら十分に対処できず、疲労・疲弊している現場や職員が多く存在します。このような状況を改善するためにも、国および自治体レベルで支援者支援プログラムの構築とそのための条件整備が早急に必要になっています。
4.福島の子どもたちへの継続的な支援 福島の子どもたちや若者たちには、今なお多くの支援が必要とされています。国連・子どもの権利委員会による第4回・第5回日本政府報告書への総括所見においても、福島の子どもたちへの継続的な健康・医療支援、金銭的支援、正確な情報提供などの措置をとるよう、日本政府に対して勧告されています。9年目に入った今、避難指示解除による帰町・帰村による人間関係の変化、仮設住宅から災害復興住宅や新しい家に移る人たちなど、震災前のコミュニティの崩壊に加えて、仮設で築いたコミュニティも再崩壊している現実があります。新たな人間関係の構築や孤立感、子どもたちは成長に応じて故郷や親元を離れたり、生活空間にも変化が生じたりするなか、子どもたちや若者の心に寄り添う支援が継続して求められています。
東日本大震災から9年目、子どもたちや若者たちに寄り添う支援を継続しつつ、 教訓を次の災害とまちづくりに生かす(PDFファイル)