東日本大震災から 11 年目のメッセージ
東日本大震災から11年目のメッセージ
2021年3月11日東日本大震災子ども支援ネットワーク
2021年3月11日、東日本大震災から10年が経過し、11年目に入ります。
この1年間、世界的な新型コロナウィルス感染拡大の影響に加え、7月には熊本豪雨災害、2021年2月14日には、東日本大震災から10年を経て被災地を再び襲った大きな余震などがありました。コロナ禍では、復興支援事業についても中止や延期を余儀なくされ、感染症対策をおこないながら少人数で実施するなど様々な工夫がなされていますが、住民同士の交流が制限され、支援を必要とする人たちに十分寄り添うことができない状況もあります。
東日本大震災の被災地でも、学校の休校やステイ・ホームによるDVや子どもへの虐待の増加、保護者の失職による生活困難など、子どもたちの生活にも深刻が及んでいます。東日本大震災によって顕在化した平時の子ども支援の課題が、コロナ禍の中で、さらに浮き彫りになっています。災害時の子どもたちや子どもたちを取り巻く保護者や学校教職員、地域の人々のニーズに応えることができるような、平時からの子ども支援の体制づくりや各機関・団体同士の連携が求められています。 今なお、約4万2千人の方々が、応急仮設住宅や賃貸住宅、親族などの家に避難されており(2021年1月復興庁)、自県外へ避難されている方々も3万3千人以上います(うち2万8千人以上が福島県からの避難者)。暮らしが落ち着かず、生活再建や心のケアを必要とされる方々もたくさんいます。 親や親しい家族、友人を亡くした子どもたちなど震災によって心に傷を負った子どもたちの心の支援、いまだ生活が落ち着かない中での子どもたちを取り巻く保護者の方々の様々な心配や悩み、ストレスへの寄り添い、悩みを相談したり、落ち着けたりする居場所を様々な場につくっていくことなど、今後も中長期的な支援が必要になります。
東日本大震災子ども支援ネットワークは、2011年5月の発足以来、行政やNPO/NGOなどの民間団体と連携しながら、国会議員や岩手県、宮城県、福島県の県議会議員、関連省庁や市民団体などとの意見交換会を通じた政策提言活動、大学などを会場とした一般の方々向けのシンポジウムの開催などをおこなってきました。東日本大震災の被災地の子どもたちの声を丁寧に聞き取りながら、子どもたち同士が語り合い、政策策定に関わる人々や復興支援に関心のある人々に発信する機会をつくってきました。そして、東日本大震災1年目から、毎年、計10回のメッセージを発信してきました(http://shinsai-kodomoshien.net/cat=53)。 これらのメッセージの中で提起された、災害子ども支援活動に求められる視点や「子どもの暮らし復興」に向けた提案の中には、11年目となる今も、そして、この困難な状況にある今こそ、一層必要とされるものが多くあります。これまでの視点や提案を踏まえつつ、東日本大震災から11年目の今、特に以下の点を強調したいと思います。
1.「誰一人取り残さない、一人にしない」支援 震災から10年が経過しても、すべての子どもたちが、必要な支援につながっているわけではありません。おとなになった子どもたちへのアンケート調査などでは、「子どもの時に相談できる場所があればよかった」、「もっと積極的に支援を求めればよかった」という声も聞かれます。「心のケア」という看板を掲げた行政などの相談窓口は、必ずしも行きやすい場所ではありません。子どもたちが身近に感じられる場所に、安心して悩みを話せる居場所があったり、日常の場で相談できる人がいたりすることで、心の傷が癒され、生き抜く力を得られる子どもたちがたくさんいます。保護者や学校関係者だけでなく、子どもたちに継続的に寄り添うことができる支援者が育成されるとともに、地域で子どもが安心して過ごせる居場所を確保していくことなどを含め「誰一人取り残さない、一人にしない」支援、そしてその継続が求められています。
2. 若者や親になった子どもたちへの支援 震災から10年が経ち、当時0歳だった子どもが10歳、10歳だった子どもは20歳、17歳だった子どもは27歳です。震災の影響を受けた子どもたちの中には、若者となり、親になっている人たちもいます。震災後、誰もが日々の生活に追われる中で、十分な支援を受けられなかった子どもたちが(特に、震災時に中学生以上だった子どもたちには十分な心のケアの支援が届かなかったことが報告されています)日々の暮らしや子育てに困難を抱えていることは、自治体の相談窓口などに寄せられる声などからも明らかになっています。災害からの復興子ども支援事業においては、現在、若者や親となっている子どもたちへの支援も含め、個々の状況に応じ、医療・心理・福祉・教育などの面から必要とされる支援をおこなっていくことが求められています。自分たちの故郷のために何かをしたい、災害の体験を語り伝えたいと「語り部」として活動している若者もたくさんいる中で、現在の被災地の子どもたちを支える人材としての若者育成にも力を入れていく必要があります。
3. 震災後に生まれた子どもたちの支援 10年という歳月を経て、被災地に居住する子どもたちのうち、約半分の子どもたちは、震災を直接体験していなかったり、震災に対する鮮明な記憶がなかったりする子どもたちです。しかし、震災後に生まれ、被災した地域の保育所に在籍する幼児や保護者を対象にした調査からは、多動で衝動性が高く攻撃的な言動をおこなう幼児が増えていること、不安や抑うつ傾向のレベルが高く支援の必要な保護者が30%を超えることが明らかになっています。震災の心の傷が癒えていない若者が親世代になっていたりして、震災の影響が未だ現在進行形で、家族機能の低下が起きていることが示唆されます。それゆえに、世代を超えた支援が求められます。
4. 東日本大震災から学ぶ「災害と子ども・若者白書」の作成東日本大震災の記憶を忘れかけている時期を迎え、また新たな災害が毎年、日本の各所で起きている中で、東日本大震災の教訓を活かすための「災害と子ども・若者白書」を作成する必要があります。関連するデータの収集を含め、災害が子どもたちにどのような影響を与えるのか、どのような予防や対応が求められるのかなどについて検証した白書が求められています。特に、災害後の短期的な影響だけでなく、中長期的に子どもたちがどのような影響を受けてきたのか、どのような災害支援が有益であり、今後も必要とされるのかも含めて、東日本大震災の子ども支援の教訓をまとめ、今後の災害に備える必要があります。
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