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「寄宿舎付き小中一貫校」に関する要望書(2011年4月2日)

2011-05-26

2011年4月2日

震災本部 御中

子どもの権利条約総合研究所
代表 喜多明人(早稲田大学教授:教育学)
副代表 森田明美(東洋大学教授:児童福祉学)
事務局長 荒牧重人(山梨学院大学教授:法学)

 

被災した遺児に対する「寄宿舎付き小中一貫校」に関する要望書

 

朝日新聞4月1日記事によれば、被災した遺児に対して、「寄宿舎付き小中一貫校」を国と岩手県が検討を始めたとあります。このことについて以下の点の検討を要望します。鈴木寛文部副大臣が言われる「同じ地域の孤児たちが同じ場所で暮ら」すことと、県教委が言われる「地元の人に囲まれてふるさとで育つ」については、重要な視点として共感します。ただ、今回の提案の中でその原則の実現として考えられている「地域」は、子どもの生活圏という地域というよりは、岩手県内沿岸部2・3か所といっても、1つの学校地域は広範囲となります。また寄宿舎あるいは青少年交流の家を使うということになると、集団の規模も大きくなる可能性が高くなります。
これらの点について、子どもの最善の利益を考える視点からの検討を求めます。

<被災遺児への支援の原則>
1.親・きょうだい・親族と一緒に
2.友達と一緒に
3.暮らしてきた地域で家庭に近い環境の実現と小規模集団での専門的支援をする
4.子どもの意思・意向を聞く

<支援の単位>
・8人以下の単位が望ましい。(グループホームの6人がより望ましい)
*傷ついた子ども集団の単位として10人を超える集団で支援を考えることは、適切ではない。集団が大きくなると、関係が複雑になり、大人との信頼できる関係を形成しにくくなり、傷つけあってしまう。
児童養護施設では1960年代に当時養護施設の子どもだけが通う小中学校が作られていた。また児童自立支援施設も近年まで大集団の指導が行われてきた。国連子どもの権利委員会からの勧告にもたびたび指摘されたことを踏まえ、また支援の限界を感じた児童福祉施設関係者たちは、児童養護では1990年代から極力小規模家庭的な環境での支援、少年教護においても、大規模での集団的な支援をグループホーム化する取り組みを展開してきた。子どもたちが、より家庭的な中で過ごし、地域社会に溶け込みやすくすることが尊重されている。また、2007年には厚生労働省でも今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会が組織され、里親委託の推進など家庭的養護の充実。子どもの状況に応じた専門ケアの充実が目指されているところである。

 

<留意点>
1.子どもの最善の利益と子どもの意思・意向を踏まえた、子どもにやさしい災害遺児支援を展開する 
A:親族里親を中心に支援者を募る
B:親族里親がいない場合
避難所や空き家を借り上げ、グループホームを立ち上げた経験のある専門家の支援を受けながら特定のおとなが支援者として指名され、自治体ごとに「○○地区子どもの家」を立ち上げる。
①避難所で支援者がみつかれば、避難所が続く間はそこを臨時の「子どもの家」として承認する
②避難所で支援者がなければ、可能な限りその学校の通学圏内に子どもの家を作る

2.これまで通っていた友達や教職員がいる地域の小中学校に通う。

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