スペシャルアドバイザー 明橋大二さん(精神科医)からのメッセージ
災害時の子どもの心のケアのポイント
明橋大二(精神科医、スクールカウンセラー)
1.「赤ちゃん返り」を受け入れる
子どもが出してくる不安のサインとして、ちょっとした音や余震におびえる、言葉が出なくなる、親のそばから離れない、すぐに「抱っこ」と言う、夜別々に眠れない、トイレに独りで行けない、などのいわゆる「赤ちゃん返り」の症状が現れることがあります。
実際に被災した子どもだけでなく、被災地の映像を繰り返し見たり、余震が続く被災地付近の子どもにも見られます。子どもは言葉で言えない分、体で症状を出してくるのです。
赤ちゃん返りの行動が出たら、じゅうぶんにつきあうことが大切です。抱っこして、夜独りで眠れないと言うのなら、一緒に寝る。
おとなもいっぱいいっぱいなので、ついつい「アンタもしっかりしなさい」と突き放してしまいがちですが、子どもの心の回復のためには、そういった赤ちゃん返りを受け入れることが、いちばん大切です。
それが、いわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)の予防にもなると言われています。
2.遊びは傷ついた心をいやす
災害を体験した子どもは、不安を解消するために、さまざまな行動を示します。地震ごっこや災害ごっこもその一つで、これは心の傷を癒すため一つの手段です。不謹慎だと叱らないほうがよいのです。災害の時の体験を繰り返し話す子もありますが、それも、心の傷をいやす働きがあります。
ただ、おとなから無理に、「ごっこ遊び」をさせたり、怖かった話を聞き出そうするのはよくありません。あくまでも子どもの自発的な表現を大事にし、受け止める、ということです。
遊びは、精神的なショックを少しでも忘れさせてくれます。ですから、子ども同士の遊びは大事です。
中越地震の時、子どもを持つお母さんにアンケートを取ったところ、何がうれしかったかというと、「コンサートや演劇を見たこと」だという回答がありました。劇でも「笑えるものが、とてもよかった」と言っています。
災害のニュース、悲惨な映像ばかり見せるのはよくありません。見せるのなら、子どもが笑顔を取り戻せるようなもの、皆で楽しめるようなものがいいと思います。
3.おとなもケアを受けて
大きな災害のあとは、子どもだけでなく、おとなも不安になります。その不安を話せる人が、親にも必要です。
ママ友でもいいですし、保健師さんや保育士さん、子育て支援センターのスタッフなど。mixiなどのママ同士のコミュニティでもいいです。
子どもだけでなく、親も傷を負っています。子どもをケアするためには、おとなもケアを受ける必要があります。ですから、親も助けを求めていいのです。
自分の気持ちを聞いてもらったり、泣きたい気持ちを受け止めてもらうことが、親にとっても大事なのです。